| オホーツク・大地の恵み -大地生まれの名士録- |
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オホーツクの大地から生まれた紳士・淑女たち。 そのみずみずしい素顔、生い立ち、 由緒正しき血筋などをここにご紹介します。 もし畑やレストランで彼らに出会ったら、 この名士録を思い出してください。 畑を見るのが楽しくなり、 食事がいっそう美味しくなることうけあいです。 |
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多芸多才にカンゲキ |
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●タマネギ |
| 「北見黄」「オホーツク1号」・・・これはタマネギの品種名。北見市を中心とする地域は、全国一のタマネギ産地として知られる。 タマネギは、紀元前4000年頃に西アジアで生まれた古参野菜である。古代エジプト、古代ローマ時代にはすでに、生薬・香辛料として大いに珍重されていた。 日本にやってくるのは時代をはるかに下った明治時代。開拓使が北海道に新顔作物として導入したのが始まりだ。出会いは遅かったけれど、その後日本人とタマネギの仲は急速に進展した。1人当りの年間消費量は10kgで、フランスやイタリアを上回る。日本は世界でもトップクラスのタマネギ消費国なのだ。 |
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![]() | タマネギは、長ネギ、ニラ、ニンニクと同じユリ科ネギ族の仲間である。これらの野菜に共通するのは独特のにおい。タマネギの鼻にツンとくるにおいも、ドラキュラさえ逃げ出すニンニクの猛烈な臭気も、その正体は同じ、各種のイオウ化合物だ。実はこれが大変な働き者。加熱すると、強いうまみに変身し、「西洋のかつおぶし」の別名通り料理のコクを深めてくれる。さらに体内では数々の薬用効果を発揮。ビタミンB1の吸収を促進し、体力、気力を増進するほか、消化促進、血行促進、整腸、殺菌・・・と、めざましい活躍ぶりだ。 多芸多才のタマネギ、キッチンに切らさずストックしたいね。 |
| カントリーは美しい |
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●ジャガイモ |
| 「男爵」とか「女王(クィーン)」とか、高貴な名前をもつジャガイモ。初夏の畑はその名にふさわしい美しさだ。白、赤紫、うす紫、青など色とりどりの花が、パッチワーク模様に大地を染め分ける。ところでトルーマン・カポーティは「実に感動的なカントリー風昼食」としてこんなメニューをあげている。オーブンで焼いたアツアツのポテトにサワークリームをこってりとかけ、大粒のキャビアを小山!のように盛り上げるのだ。一度試してみてはいかがだろう。でも、オホーツク育ちのジャガイモなら”そのまま”で十分おいしい。塩ゆでしただけ、バターをのせるのもいい。ヒミツはー昼暑く夜涼しい、オホーツク特有の気候条件にある。昼間は高温に誘われて、せっせとデンプン製造。ぐっと冷えl込む夜は、呼吸作用が抑制されるため、デンプンが地下茎(食用部分)にそっくりストックされる。豊富なデンプン質こそ、ほくほく味の正体なのだ。 |
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さらに好都合なことに、収穫後のジャガイモには「休眠」という性質がある。低温下におくと、眠った状態が続き、味や品質がほとんど変化しない。おかげで私たちは、秋に収穫したジャガイモを翌年の春先までおいしく食べることができるわけだ。ちなみにフランス人はジャガイモのことを「大地のりんご」と呼ぶ。なにしろ優秀なビタミンCの補給源、食物繊維もたっぷり。 |
| 変幻自在の活躍ぶり |
| ●小麦/二条大麦 |
| はじめにクイズをひとつ。「麦秋」とはいつのこと?正解は夏、麦が実る季節だ。緑濃い夏のオホーツクで、そこだけ赤みを帯びた黄金色に輝いているのが麦畑。とても印象的な風景だ。小麦は世界中で最も多く生産される穀物である。ヨーロッパ人も、中国人も、インドや中近東の人も、小麦を利用して実に多彩な食べ物を作り出してきた。私たち日本人も、一日たりとも小麦を口にしない日はないだろう。パン、スパゲティ、うどん、ラーメン、ケーキ・・・数えあげればキリがない。ただし、原料小麦はそれぞれ微妙に違う。パンは粘りの強い硬質小麦(強力粉)、うどんは半硬質小麦(中力粉)、ケーキは軟質小麦(薄力粉)というように。 雨の多い日本は、粘りの少ない品種が大半だが、全国一の小麦産地・北海道では、パン用小麦も栽培されている。ホームベーカリー派にはひっぱりだこの人気だ。 |
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![]() | もうひとつ、オホーツクで栽培されている麦類に「二条大麦」というのがある。なにをかくそう、これがビールの原料なのだ。畑での二条大麦は、絵に描いたように麦らしい(?)姿をしている。大粒の実のそばから、長いヒゲがスッと伸びて、矢羽根麦の別名通り。リースにしたくなる美しさだけれど、間違っても畑の中に入らないこと。いつもお世話になっている麦たちと、礼儀正しくお付き合いしたいものだ。 |
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自然がくれたピュアな味 |
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●ビート |
| 甘いものが大好きな女の子がいつもお世話になっているのは、この作物。見た目はカブやダイコンにそっくりだが、実は砂糖の宝庫、ビートである。もうひとつの砂糖原料、サトウキビは、熱帯・亜熱帯の作物だ。逆にビートは寒冷地育ち。そこに目をつけたのがナポレオンだった。というのもイギリスと国交を断絶した彼の、悩みのタネが砂糖問題。東南アジアなどイギリスの植民地から輸入していた砂糖が全面ストップしてしまったのだ。「ビートならヨーロッパでも育つ」と気づいた彼、早速栽培を奨励。功労者にはレジョン・ド・ヌール勲章を授与して、栄誉を讃えたという。おかげで今ではビート糖の生産量は、サトウキビを上回っている。私たちの日本では、消費する砂糖の70%は海外から輸入している。残りの30%が国内産というわけだが、意外なことに、全国一の生産地はここ北海道。その40%近くをオホーツクで生産しているのだ。 |
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![]() | 収穫がほとんど終わった晩秋、妙に青々と元気な葉を繁らせた畑があったら、それはきっとビート畑だ。おひたしにできそうな葉だが、もちろん食べたりしない。このパワフルな葉が光合成の働きで糖質を製造し、地中の根にせっせと蓄えているのである。紅茶にスプーン1杯の砂糖を入れるとき、植物の不思議な営みを思い出して欲しい。これもまたピュアな自然の結晶なのだ。 |
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食卓アート、楽しみたい |
| ●豆 |
| 童話の国のわらの家?と、メルヘン気分に誘われる。晩秋の畑に点々と並ぶニオ積み。刈り取った豆を茎葉ごと積みあげ、自然乾燥させているところだ。こうすると、豆のつや、風味に一段と磨きがかかるという。 豆とひと口にいっても、その種類は様々だ。オホーツク地方で栽培されているのは、大豆、小豆、インゲン類。とりわけインゲン類はカラフルで、紅色の金時、アイボリーの白インゲン、茶色の斑点模様が愛らしいうずら豆、とら豆・・・と、自然のアート感覚に驚かされてしまう。おなじみの大豆、小豆は、中国・日本で古くから愛されてきた。伝統食や和菓子づくりに欠かせない豆である。ではインゲン類は?煮豆や甘納豆しか思い浮かばない、というのはちょっとさびしい。 |
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![]() | 豆は欧米人の大好物。スープやシチュー、サラダなど、毎日の食卓の定番メニューに取り入れられてきた。西部劇でも、カウボーイが無骨な手つきで食べるのは、決まってポーク&ビーンズだ。最近では、アメリカ人の間で日本の大豆製品が大流行。欧米人というとお肉ばかり食べているような気がするけれど、実際には、タンパク源としての豆をフルに活用しているのだ。 健康美人を目指す女性には、こんな習慣を見習ってほしい。高タンパク、低カロリー、おまけにビタミン・ミネラルの宝庫。豆は万国共通のヘルシー食なのだ。 |
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ねばり強さが身上 |
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●ナガイモ |
| 畑の様子を見ただけでは正体不明。ツル状の茎葉を支柱網にからませて繁茂した姿は、エンドウ豆やアイビーを連想させるが、主役は土の中。実はこれがナガイモの畑なのだ。オホーツクでは、大空町東藻琴や北見市でよく見られる。 多くのイモ類は、植物学上はアカの他人だという。ジャガイモはナス科、サツマイモはヒルガオ科、サトイモはサトイモ科、そしてナガイモはヤマイモ科に属している。この中で最も古くから日本人とお付き合いしてきたのがナガイモ。西洋野菜の多い北海道で、こんな”純和風”素材がつくられているとは、旅行者にはちょっと意外かもしれない。 |
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![]() | ナガイモの特徴はなんといっても、粘りの強さだ。昔の人たちは、ウナギ、カキ、ナメコ、オクラなどの”ぬるぬる食品”を滋養強壮食として珍重してきたが、ナガイモもそのひとつ。漢方薬では疲労回復薬になっている。栄養学的に見ても、これは正しい。粘りの成分はタンパク質と糖質が結合したもの。そのうえ消化酵素のジアスターゼがダイコンの数倍も含まれている。生のままでも食べられるのはそのおかげだ。 千切りにすると、シャリシャリとさわやかな歯ざわり。すりおろしてとろろ汁。洋食派にとっても、なつかしい味である。 ちなみにナガイモの収穫は晩秋だが、ひと冬貯蔵すると、うまみや粘りが増す。翌年2月頃のナガイモが一番おいしい。 |
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本場のみずみずしさを |
| ●トウモロコシ |
| 大きな景色の真ん中で、香ばしく焼けたトウモロコシをまるかじり。高級レストランにも負けない、夏一番のご馳走だ。もっともこんな食べ方、歴史的にはごく新しい。トウモロコシは米や麦と同じイネ科の仲間。れっきとした穀物なのだ。 昔の人は、カチカチに完熟させた実を粉に挽いたり、お粥にして利用していた。たとえばメキシコ人の大好きなトルティーヤは、トウモロコシの粉で作った円盤状のパン。 中に豆や肉などの具をはさんだものがタコスである。 これがなくては食事が始まらない、というくらい大切な主食なのだ。 未成熟の柔らかい実を食べる「スイートコーン」は、20世紀のアメリカで生まれたものだ。 |
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![]() | ところで意外なのは、トウモロコシの花。茎のてっぺんに穂のように伸びているのが雄花、サヤからのぞく絹糸(英語ではtassel/タッセル=帽子のふさ飾りと呼ぶ)が雌花だ。華やかさはないけれど、さやさやと風が渡るトウモロコシ畑は、見るからにすがすがしい。 アメリカには「湯をわかしてから、トウモロコシをもぎに行け」ということわざがある。収穫後のトウモロコシは、常温下でも急速に鮮度が低下し、甘味が半減してしまう。現在は味の変化しにくい品種が主流になっているが、それでも産地で食べるトウモロコシのおいしさは格別。歯に触れると、ピチッとはじける朝もぎのみずみずしさには、9月のオホーツクで出合えるはずだ。 |
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気持ち、ほくほくしてくるね |
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●カボチャ |
| ハロウィーンの主役は、ユーモアたっぷりのカボチャたち。日本でもおなじみのこの行事、起源はずいぶん古い。 アメリカ大陸に渡ったピューリタンたちが、先住者のインディアンからカボチャ栽培を教わり、パイをつくって神に捧げたのが始まりだという。 さらにそのアメリカ人が明治期に伝えてくれたのが、北海道のカボチャなのだ。日本では古くから水分の多い「日本のカボチャ」が栽培されてきたが、こちらは「西洋カボチャ」。栗のようなほくほく味と、豊かな甘味が特徴だ。 パイやプディング、とろりとコクのあるポタージュにすると、その美味しさを実感できる。 |
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![]() | カボチャは生命力の旺盛な作物だ。やせた土地でも手をかけなくてもたくましく育つ。でもオホーツクのカボチャたちはいわば有名ブランド品、待遇が違う。そのまま育てれば10数個もの実ができるのに、ひとつの株で育てるのはわずか3個。少数のエリートに養分を集中させ、中身をしっかり充実させるのだ。おまけにオホーツクの夏は、昼暑く、夜は涼しい。この温度差が、たっぷり甘味を蓄えてくれる。うれしいことにカボチャは、申し分のないヘルシー野菜だ。カロチンをはじめ、ビタミンB群、C、カルシウム、鉄分、繊維質・・・若さと美貌をつくる栄養素が、そっくり同居しているのだから。 「パンプキンイエローは健康色」と頭にしっかりメモしておこう。 |
| 都会に似合う実力野菜 |
| ●アスパラガス |
| ほっそりとスリムな姿、みずみずしい歯ざわりとほのかな甘味。アスパラガスはオシャレ度ナンバーワンの野菜だ。なにしろ16〜17世紀のパリ社交界で、美食家たちを夢中にさせたという華やかなキャリアの持ち主。古い料理書には「アスペルジュ・フォントネル」というメニューがのっているが”フォントネル”とは、アスパラガスをこよなく愛した有名なグルメの名前である。そのアスパラガスを日本で初めて本格的に栽培したのが、ここ北海道。地中に深く根を張り、1度植えると10数年も続けて収穫できるアスパラガスは、根株の充実度が品質の良し悪しを左右する。北海道の冷涼な気候は根株の生育にうってつけなのだ。 |
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![]() | オホーツクでは上湧別町、遠軽町、美幌町、津別町、清里町、北見市などで、5月、6月をピークに出荷される。 私たちが食用にしているのは新芽の部分。そのまま成長を続けると、レース状の枝葉を大きく伸ばし、人の背丈ほどにも育つ。 ユリ科の仲間である証拠に、夏にわずか数ミリのユリ形の花をつける。ちなみにホワイトとグリーン、色の違いは育ちの違い。新芽の出る前に盛り土をして、陽をさえぎったものがホワイト、陽に当てたのがグリーンアスパラガス。栄養的には、やはり全身に陽ざしを浴びたグリーンに軍配があがる。各種のビタミン・ミネラルが勢ぞろいしていて、ホウレンソウやブロッコリーも真っ青の実力派なのだ。 野菜不足におちいりがちな都会暮らしのシングルは、とくにマークしたい野菜だ。 |
| 牧畜風土のおくりもの |
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●牛乳/チーズ |
| 地平線まで続く広大な牧草地、のんびり草をはむ牛たち・・・オホーツクの大地ではお馴染みの牧場風景だ。コクのあるおいしいミルクは、このスケール、このさわやかさが育てたものだ。牛たちの食生活は、クローバー、ティモシー、オーチャードグラスなどの牧草によって支えられている。夏の間は青草のままで。冬は、干し草、サイレージ(干し草をサイロで醗酵させたもの)のかたちで。ほかに穀物をミックスした配合飼料もあるが、牛の健康を守る上で重要な働きをしているのが、牧草=粗飼料なのだ。牧草地の広さと牛の元気度は、比例するといってもいい。しかも暑さが苦手な牛にとって、夏でも天然エアコンの効いたオホーツクの気候は最高に快適。機嫌よく、コクのあるミルクを出してくれるわけだ。観光客が「こんなにおいしいミルクははじめて!」と感激するのも当然なのである。 | ![]() |
![]() | 世界中で完全栄養食品として愛されてきたミルク。加工用途の幅広さも抜群だ。 中でもグルメに評判なのが、東藻琴や訓子府、興部などのナチュラルチーズ。上品な味わいのカマンベール、穏やかな風味のゴーダ、赤玉の愛称で知られるエダム・・・乳酸菌の生きている生のチーズだけに、それぞれ味や風味が微妙に違っていて、食べ比べるのも楽しい。 フランスには、村から村へ個性的なチーズを食べ歩く「チーズロード」があるそうだが、その楽しみの一端を、ここオホーツクで体験してはいかがだろう。 ヨーロッパによく似た牧畜風土が生み出すリッチな味の世界。そして、自然の素晴らしさを身体で実感してほしい。 |