森林ウォーク豆知識

(倒木更新)


森林ウォークの話
 オホーツク圏は、北海道屈指の森林面積を有し、森に抱かれるように多くの湖、川、滝、岩、峠が存在し、まさに、知床に代表されるような、最も北海道らしい地形と風景が残る地域といわれています。オホーツクの森を歩く「森林ウォーク」は、観光、癒し、健康、教育の面から、他領域、他分野との連携という、新しいジャンルの取り組みとして、2005年からオホーツク圏観光連盟が提唱している事業です。
  「森林ウォーク」という言葉は、森林浴をメインに、それまで森を活用して行われていた様々な学習やイベントの要素を盛り込み、冬の「流氷ウォ−ク」のように体験観光として定着するようにと命名しました。因みにイベント名で「○○ウォーキング」とINGが付く場合は、比較的長い距離の設定で、肉体面での健康づくりにウエイトをおいた、スポーツや健康サイドの主催が多いようです。一方「○○ウォーク」は、特色あるコースや内容を楽しみながらゆっくり歩くことにウエイトをおき、癒しや学習、希少体験など、精神面での充足感や感動を提供しようという観光サイドの取り組みが多いようです。

森林浴の話
 森林浴がすがすがしく感じるのは、フィトンチッド(Phytoncide)の効果によるものと言われています。
  フィトンチッドとは、ロシア語で「植物が放散する抗菌・殺虫物質」のことで、フィトンとは「植物」、チッドとは「殺す」を意味しています。樹木の香気成分であるテルペン類がこれに相当すると考えられ、テルペン類が部分酸化する際に現れるマイナスイオン物質の作用で次のような効果があるといわれています。
●害虫忌避●有害菌の不活性化●消臭効果●精神安定効果(リラクゼイション)等。
さらに、これらの効果で、次のような優れた医療・美容効果が認められています。
●大脳皮質を活性化し調整力を高める●高血圧を抑制●神経系の緩和●皮膚病・呼吸器系疾患の改善●アレルギー性疾患の予防・回復等、また、最近の研究では、ガン細胞を防ぐNK(ナチュラルキラー)細胞が増えるという結果など科学的にも実証されてきています。

「森林浴の森100選」の話
 林野庁と緑の文明学会、地球環境財団が共同で、1986年(昭和61年)に制定した百選。
 この制定は、林野庁が1982年に「健康・保養に日本の森林を活用しよう」と提唱する際、『森林浴』という言葉をキャッチフレーズ的に使ったことから広く森林浴という言葉が広まり、乗じて、「日本の森林を21世紀に引き継ぐため、また、自然保護の精神を養い国民の健康増進に役立てること」を目的として、全国各地から100ヶ所の森を選定したものです。北海道からは、札幌市の「野幌自然公園」、函館市の「函館山」、利尻町の「利尻島自然休養林」、網走市の「網走自然休養林」の4箇所が選ばれています。

森林セラピーの話
 林野庁では、森林の保健休養機能の効果について科学的実証を試みてきていますが、森林浴時には、唾液中のストレスホルモン(コルチゾール)の濃度が低下するとともに前頭前野の活動が鎮静化し、生理的にリラックスしていることがわかってきています。このように森林浴は、高血圧やストレスの改善、体全体の抵抗力を高めるなどの副次効果があるといわれ、ドイツ・デンマークの例では、医療保険や保養休暇の制度など、森林をリハビリや癒しのために利用する仕組みや、森林環境を幼児の保育や環境教育の場として利用する建物のない「森の幼稚園」などの活動もあり、効果を上げています。
 森林セラピーは、森林の地形や自然を利用した医療、リハビリテーション、カウンセリングなど、森林環境を総合的に使いながら健康を増進していこうという取組みです。
 因みに、管内の津別町は、森林セラピー」の基地認証を平成23年に受けることが予定されています。北海道内では鶴居村(休止中)に次いで2箇所目ですが、実際に活動が始まれば北海道で唯一「森林セラピー基地」の町となります。
 
巨樹・巨木調査の話
 巨樹・巨木として環境省の調査基準となる対象は、地上から1・3メートルの位置で幹周囲が3メートル以上の樹木で、日本の巨木総数は13万〜15万本と推測されています。2001年の調査報告書によると、全国の巨木数ランキングは東京、茨城、千葉の順となっています。もっとも多かった樹種はスギ(1万4869本)で、次いでケヤキ(9452本)、クスノキ(5926本)、イチョウ(4855本)の順。所有者でもっとも多かったのは寺社で、全体の57%を占めています。また、幹周囲が12メートル以上の巨木117本を都道府県別にみると、鹿児島県が13本ともっとも多く、次いで山形県、静岡県、福岡県が各7本、青森県が6本、岐阜県、沖縄県が各5本と続いています。

「森の巨人たち百選」の話
 林野庁が2000年に、次世代への財産として残すべき「国民の森林」を選び、保護活動を進める事業の一環として、日本全国の国有林の中から直径1m以上の樹木や地域のシンボルになっている樹木を候補として、そのなかから百本を選定したものです。北海道からは11本が選出されていて、オホーツク管内からは置戸町鹿の子沢にある「三本桂」と網走市能取にある「美岬のヤチダモ」が登録されています。

北海道と巨木の話
 北海道が本州に比べて巨木が少ない理由は、巨木に成長するスギやケヤキ、クスノキなどの樹種がない、あるいは少ないことや、寒冷地のため1年簡に成長するスピードが遅いことが推測されます。言い換えれば同じ樹種で樹齢が同じでも、本州や温暖な地域とは幹の太り方に大きく差が出るということになりますが、北海道の木は、木質がしまっている分、狂いが少なく、建築材や家具材に向いています。

年輪の話
 木を輪切りにして見ると、色の濃い輪になった筋が、何本も見えます。この筋は毎年、1本ずつできるので「年輪」といいます。木は、春から夏にかけてよく太り、冬には太りません。これは、木を形作っている細胞が、春から夏には大きい膜の薄い細胞となり、秋が近づくにしたがって、小さくて膜の厚い細胞となり、やがて冬になると、成長が止まるからです。この小さくて厚い細胞が、色の濃い筋に見えるのです。日本のように、春・夏・秋・冬と四季の移り変わりがあると、「年輪」ができますが、四季の移り変わりの少ない熱帯地方の木は、1年中同じような成長をするので、「年輪」はできません。

先駆植物・先駆樹木(パイオニア)の話
 そもそも森林は、もとを突き詰めてたどれば、木立一本無い寂寞とした荒野から始まっています。植物の種子も切り株も何もない荒野から始まり、森林へと変化する場合、その変化の過程を一次遷移と呼びます。一次遷移が始まる代表的な場所としては、火山の大爆発によって火山礫が全ての植物を埋め尽くしてできた火山荒原や、海底が隆起してできた陸地などがありますが、そんな植物の痕跡が全くないところでも、何百年も経つとどこからともなく植物がやってきて定着し、やがて草原ができ、さらに樹木が定着して、最終的には鬱蒼とした森林になったりします。このように裸地化した所にすばやく進出して、環境を安定させる植物や樹木を先駆植物・先駆樹木(パイオニア)といいます。樹木の代表格は、シラカンバ(白樺)がそのひとつで、幼時の成長は早く、裸地に純林を成立させます。シラカンバの種子は小さいために、裸地などの乾燥しやすい場所で発芽、定着しやすいのです。

自然林の話
 自然林は、人工林に対して使われる言葉で、自然の力によって成り立った本来の森林のことです。自然林は人の手が入っていないということではなく、経済的な価値のある樹木を育てるために伐採や苗木の植栽など、人の手が入っても、成立の過程が主として自然の力によるものである場合は自然林といいます。人の手が入っていない自然林は原生林と言われ、樹木をはじめとする生物の自然条件における生態を研究する上で学術的に高い価値があります。

二次林の話
 自然林が伐採された後、または焼失した後に自然に生えてきた樹林を二次林といいます。普通は自然林イコール天然林ですが、自然林と二次林を総称して天然林と呼ぶ呼び方もあります。日本は降水量が多く、気候も温暖なので、伐採しても比較的短期間で二次林が成立します。二次林は自然林とは異なる樹種になることが普通です。

人工林の話
 人の手によって植えられた樹林を人工林といいます。伐採して商品として売るために植えられた樹林です。しかし、国内の人工林は外国産の安い木材によって市場を奪われているため、放置されているところも多く、人工林の放置は樹木の商品価値を下げるだけでなく表土の保持、水源涵養(かんよう)といった環境を守る機能も低下させます。

雑木林の話
 普通は、木材生産するような太い木のない天然林を指します。また、人里に近い林で、クヌギやコナラといった広葉樹を中心に、薪として使うために人の手を加えた天然林を薪炭林(しんたんりん)≒里山林といいますが、雑木林に含めることが多いようでます。
 
トドマツとエゾマツの話
 寒冷地である北海道の天然林は、針葉樹が比較的に多く、中でも多く目につくのが、「アカエゾマツ」・「エゾマツ(蝦夷松、クロエゾ)」と「トドマツ(椴松)」です。遠目にはよく似ていますが、エゾマツがトウヒ属であるのに対して、トドマツはモミ属です。エゾマツとトドマツの見分け方に、「幹に対して枝ぶりが、天まで届けと上に向いているのがトドマツで、蝦夷にようこそとお辞儀するように下に向いているのがエゾマツ」との説明をよく聞きますが、そうとは限らないようです。近くに寄れば、樹皮が比較的灰色でツルっとして、葉の先端が平ら、もしくは窪んでいるのがトドマツと判ります。因みにアカエゾマツは幹の色が赤っぽいのと葉の形が若干違うことでエゾマツ(クロエゾ)と区別して言うことも多いようです。

カラマツの話
 カラマツは、「唐松」や、落葉することから「落葉松」とも書き、わが国に自生する唯一の落葉針葉樹です。北海道では、秋の紅葉シーズンにカラマツ林全体が色づき、夕日に黄金色に輝く様は圧巻です。カラマツ属は、いずれも陽樹(日当たりの良い場所を好む)で、成長が早いため、何らかの原因で森林が消滅した場所に真っ先に進出する樹木(いわゆる先駆植物)のひとつです。通常の立地の下では、やがてはエゾマツ(トウヒ属)・トドマツ(モミ属)など、暗い場所を好む樹木(陰樹)に取って代わられて一代限りで消えていくため、川の周囲や湿原、断崖絶壁の上など、特殊で悪条件の場所以外は、通常カラマツの森が永続することはないようです。成長が早いことから、木材利用が逼迫した時期には寒冷地での植林樹種として利用され、北海道にも明治以降大量に植林されました。かつては炭鉱の坑木として利用され、坑木不足が石炭の出荷量を左右したことから、盛んに植林が行われましたが、皮肉なことに植林が軌道に乗った頃には炭鉱の閉山が相次ぎ、カラマツ市場は急激に縮小したという歴史を持っています。
  今は、乾燥技術などの向上もあり、ねじれなどの欠点が解消され、強度が高いことから建設材などへの利用が期待されつつあります。

北海道のササの話
 北海道の森にはササが多い。ササを紙や薬の資源として活用することを目指す研究者達によると全国に約2億トンの資源量があり、このうち約75%が北海道内にあるといいます。また、北海道で考えるとササ(チシマザサなど)は、森林全体の重量の約28%をも占めるそうで、同じ緯度で気候風土の近い北米やヨーロッパではこうしたササの分布がなく、これは、氷河期の状況の違いに関係があるとのことです。
 北海道のササは、その背丈と葉で大雑把に見分けることができます。30cm〜1m以内ならミヤコザサ(葉は細長い)、1〜1.5mならクマイザサ(葉の裏に細かい毛がある)、1.5m以上ならチシマザサ(葉の裏に毛がない)です。

北海道のタケノコの話
 北海道で「タケノコ」といえばチシマザサ(根曲がり竹ともいう)のタケノコで、北海道では年間100万トン以上が食用に利用されているそうです。タケノコを漢字で書くと、竹冠に旬として「筍」ですが、漢字「筍」は、古典にある「旬内に竹の子となりて、旬外に竹となる」が誕生の由来という説があります。旬は、1ヶ月を3分したそれぞれの10日間を意味することから、タケノコの生長は早く、収穫期間が短いことを言い表しているという説です。

クマイザサとクマザサ
 クマイザサの名前の由来は、葉が9枚つくことからというのが定説です。実際には3〜9枚が多く、12枚つくこともあります。標準和名、クマザサ(隈笹)とよぶササは、葉の縁が白く隈取されたササで、京都を中心とした本州に自生しています。
 北海道で俗称として使われている「熊笹・クマザサ」は、笹が深く密生する所を称して呼んでいるもので、標準和名としては存在しません。
  
もみじの話
 木の葉が紅色や黄色、黄褐色に変わることを、「もみじ」(旧仮名遣い: もみぢ)といいます。もともとの意味は、秋口の霜や時雨の冷たさに揉み出されるようにして色づく、「揉み出るもの」の意で、「揉み出づ」から「もみづ」、それが名詞化して「もみじ」になったというのが通説です。本来は、落葉樹一般の葉が赤や黄に変色する現象をいいますが、今では特に目立って色を変えるカエデの仲間を「もみじ・モミジ」と呼んでいます。

モミジとカエデの話
 「モミジ」と「カエデ」は、別の意味を持った言葉で、その名の由来が違います。モミジは、秋に草木が黄色や赤色に変わることを意味する動詞「もみず」に由来していますが、カエデは、葉の形がカエル(蛙)の手に似ているので、「かへるで」、後に「カエデ」と呼ばれるようになりました。昔は、カエデの仲間で、葉が手のひらのように切れ込んだものをすべて「かへるで」と呼びました。「モミジ」も手のひらの形をしているので「かへるで」と呼んだようです。そのため、今も「モミジ」と「カエデ」は同じ意味のように使われていて、例えば「イロハモミジ」のことを「イロハカエデ」と呼ぶこともあります。どちらもカエデ科カエデ属で植物の分類上は同じですが、盆栽や造園の分野では、葉の見た目で使い分け、葉の切れ込みが深いカエデを「○○○モミジ」、葉の切れ込みが浅いカエデを「○○○カエデ」と呼んでいます。

紅葉の話
 秋、植物は葉を落とすための準備を始めます。葉柄の付け根にコルク質の離層という組織がつくられ、物質の行き来はここで妨げられます。そのため葉の中の物質は茎や幹に移動できなくなり、光合成で生産された糖は葉に留まることになります。紅葉する葉では、この糖から赤い色素アントシアニンができて葉は赤くなります。葉はやがて、離層のところで切り離されて落葉します。アントシアニンの合成には、温度と光の条件が重要で、1日の最低気温が8℃以下になると紅葉が始り、5〜6℃以下になるとぐっと進むといわれています。鮮やかに紅葉するには、日中の気温は20〜25℃で夜間は5〜10℃になり昼夜の気温の差が大きいこと、空気が澄んで葉が充分日光を受けられることや、大気中に適度な湿度があって葉が乾燥しないことなどが必要です。
 代表格は、ヤマモミジ、ハウチワカエデ、ナナカマド、ツタウルシ、ヤマザクラ、ヤマブドウなどです。

黄葉の話
 葉に含まれる色素には、緑色のクロロフィル(葉緑素)、黄色のカロチノイド(カロチン類とキサントフィル類)があります。量はクロロフィルがカロチノイドよりずっと多いので、黄色は目立たず、葉は緑色に見えます。秋、気温が低くなると葉の働きが弱まり、クロロフィルが分解されます。そのため、クロロフィルに隠されていたカロチノイドの色が目立って黄色になります。
 代表格は、イチョウ、カツラ、イタヤカエデ、ハルニレ、シラカンバなどです。
                  
褐葉の話
 黄葉と同じ原理ですが、タンニン性の物質(主にカテコール系タンニン、クロロゲン酸)や、 それが複雑に酸化重合し、プロパフェンと総称される褐色物質の蓄積が目立つためとされ ます。 代表格は、ブナ、ミズナラ、カシワ、トチノキなどです。

ハルニレとアイヌ神話
 アイヌが口承して伝えたユーカラには、ハルニレの樹が登場します。地域ごとにその伝わる内容が違っていたりしますが、重要な樹であったという事が伺えます。
 曰く、神々が大地を創造した時に使った道具がハルニレの木材を使っていた。
 曰く、神々が創造した世界に最初に登場したのがハルニレの樹であった。
 曰く、神々がハルニレの樹から火をおこし、人間に授けた。
 また、ハルニレは女性神であったとされ、こんな伝承も残されています。
 「ハルニレの樹の神、チキサニカムイは大変美しく、多くの神々が見とれていましたが、雷神・カンナカムイもその一人で、天上から熱心にチキサニカムイを見つめていました。ところが、悪戯好きの神が、カンナカムイを地上に突き落としてしまい、地上に落ちたカンナカムイはチキサニカムイと結婚しました」というものです。

ハルニレとオヒョウの話
 ハルニレとオヒョウは、同じニレ科ニレ属でとても似ていることから、木材としてはだいたい同じように扱われています。両方をひとくくりにして、『ニレ』という扱いを受けているのが一般的かもしれません。
 実はアイヌ神話には、オヒョウも登場しています。それによると、雷神と結婚したのはハルニレの精・チキサニと、オヒョウの精・アトニの二人だというのです。二人は姉妹であったそうで、それぞれ子供を産みました。 樹心が赤いハルニレの精の子は顔が赤く、木肌が白いオヒョウの精の子は顔が白かったそうです。
  因みに、アイヌの伝統工芸に、アツシ織というものがありますが、これはオヒョウの樹皮の繊維から作られたものです。 

カツラ(桂)の話
 カツラはほぼ日本固有の樹種で、高さは30mほど、樹木の直径は2mほどにもなります。葉は、ハート型に似た円形が特徴的で、秋には黄葉し、落葉は甘い香り(醤油の良いにお いに似ている)を漂わせます。
 中国の伝説では、「桂」は「月の中にあるという高い理想」を表す木であり、「カツラ(桂)を折る」とも用いられますが、中国で言う「桂」はモクセイ(木犀)のことです。日本と朝鮮では古くからカツラと混同されていて、万葉集でも月にいる「かつらをとこ(桂男)」を歌ったものがあります。


カシワ(槲)の話
 一般に柏と書かれますが、柏は、中国産の針葉樹であるコノテガシワのことで、本来のカシワの漢字は槲が正解のようです。カシワの樹皮には、15%程度のタンニンを含み、わが国の重要なタンニン原料であったため、北海道のカシワは著しく減少しました。タンニンはお茶などにも含まれますが、カシワのタンニンは主に革なめしに使われたほか、樹皮は煮だして染色にも使われました。
  カシワは冬でも枯葉が落ちないで翌春まで樹上に残るので、昔から縁起の良い木として、慶事・神事に使われました。端午の節句で食べられる柏餅の由来も、新芽が出ないと古い葉が落ちないというカシワの特徴から、これを「子供が産まれるまで親は死なない」=「家系が途絶えない」という縁起に結びつけ、「柏の葉」=「子孫繁栄」との意味を持たせています。  

ヤチダモと雪虫の話
 雪虫は、北海道で雪の降り出す頃に飛び回る、白い綿毛をまとった2-3mmの小さな虫です。雪のない夏から秋にかけてはトドマツの根に寄生して繁殖しますが、10月後半には羽の生えた白い成虫となり、一斉に空中を飛んでヤチダモに移動します。ここで生まれた子虫がヤチダモに卵を生み付け、越冬した卵はヤチダモの葉が出る頃にかえって成虫となり、6月には、再びトドマツに向かいます。

倒木更新の話
 北海道の森はササが多いために、森の植物は厳しい生存競争を強いられます。花を咲かせ実をつけて種子を飛ばしても、ササの葉に邪魔されてうまく地面に着地できないからです。運良く芽を出したとしてもササの葉の下では、光の量が100分の1程度になってしまい上手く成長できないのです。それでも自然は大きな可能性を残してくれています。寿命が尽きたり、雪や嵐で倒れた樹木の上に落ちた種子は、ササに陽光を邪魔されることや地面の雪腐れ菌におかされることもなく、芽吹くことができるのです。腐朽が進んだ老木が自らの身を捧げて次世代の若木を育て、やがて若木が大きな木に成長し、老木は土に返っていく、この現象が“倒木更新”です。オホーツクの森林の中でエゾマツやトドマツの根元が浮き上がっていて一直線に並んでいる光景を見かけたら、かつて根元に横たわっていた老木の姿を想像してみよう。大自然と時間が作り上げる崇高なドラマを感じることができます。 
 
 
凍裂(とうれつ)の話
 真冬、樹木の幹の中にたまった水分が凍結、堆積が増えることで樹木を切り裂き、割れる現象を凍裂といい、マイナス25℃くらいでこの現象が起きるといわれています。 ほとんどの広葉樹は秋に葉を落とすことで水分も補給しなくなるために、冬は乾いた状態になります。寒さの厳しい北の国では秋に葉を落とすカラマツや、幹の中の水分を不凍液のような凍りにくい成分に置き換えるエゾマツやトドマツのように寒冷地対応になったものでしか生き残れません。そのような寒冷地の樹木でも能力以上の寒さや、水分が必要以上にある場合は凍裂が起きます。
        
被雷木の話
 被雷木という言葉があるかどうかわかりませんが、森の中では木の内部だけ焼け焦げ て空洞になっているものがよくあります。これは状態からして落雷によるものと想われます。 因みに雷が鳴っているときに樹木の近くに逃げ込むのは極めて危険な行為です。高い樹木は雷が落ちやすい上、樹木に落雷した場合、樹木を通って地面へ雷電流・電圧が流れるからです。そのため、人体が雷撃の通り道の樹木に近づいていると、樹木から人体への再放電による側雷を受けてしまいます。雷撃の電圧は数十万ボルトですので、小枝や葉っぱを通して空気の絶縁を破壊し、枝先や葉っぱから雷撃が襲ってくることがあります。

白樺の雪害の話
 時々森の中で、何十本もの白樺が、イナバウアーのようにグニャリと下向きに曲がっている光景を見かけます。雪の重みで枝が折れることは、ほかの樹木ではよくある話ですが、白樺の場合、柔軟性がある上に成長が早いため、曲がったまま成長したと思われます。
 
シラカンバとウダイカンバとダケカンバの話
 シラカンバ(白樺、低地に生育)は、生活地帯でも普通に見られ、一番見なれた樹木です。。樹齢10〜15年で繁殖を開始しますが、寿命は短く80年ぐらいと言われています。一方、ウダイカンバ(鵜松明樺、山地)は、樹齢40〜50年にならないと繁殖を開始せず、寿命は長く、200年以上におよぶ個体もあります。樹皮がよく燃えて鵜飼いの松明になることからこの名がついていますが、マカバ、マカンバともいい、3種の中では代表格で一番大きくなります。ダケカンバ(岳樺、高山帯)は、この2種よりも標高の高い所に生育し、繁殖開始はシラカンバのように早く、寿命はウダイカンバのように長いとされています。葉の見分け方は、シラカンバとダケカンバは葉が三角で大きさも似ていますが、シラカンバは側脈の数が6〜8対なのに対して、ダケカンバは7〜12対と多く、ウダイカンバの葉はこの2種より倍くらい大きく広卵型です。樹皮はシラカンバ、ウダイカンバ、ダケカンバの順に白、灰、灰褐色と黒ずみます。また、多くの場合、枝が黒ければシラカンバ、樹皮が赤みがかっていればダケカンバの確立が高いそうです。