オホーツク地域は北海道の北東部にある18市町村で構成されそれぞれ個性的な特色を有しています。
北は紋別郡雄武町から南は斜里町知床まで9市町がオホーツク海と海岸線で接し、280kmにも及んでいます。
管内は原始的景観を誇る知床と阿寒の2つの国立公園、網走国定公園のほか、斜里岳、天塩岳の2つの道立公園を有し、森林と湖沼と海が融和した豊かな自然資源に恵まれています。
特に冬1月から3月にかけて、わが国唯一の流氷・結氷地帯となるなど世界的にもユニークな特徴を持ち、最も北海道らしい風景を擁した地域です。2005年7月には知床が世界自然遺産に登録、11月には涛沸湖がラムサール条約登録湿地に認定されました。
管内総面積は、10,691平方キロメートルで、新潟県に匹敵する広さを持ちながら、管内人口は約31万人。
各地でみられる農業景観に代表される雄大な景観が日常生活の一部になっていることも魅力のひとつで、この地域には、年間約1000万人ほどの観光客が訪れています。
オホーツク地域の主な産業は農業と漁業などです。農業は全道1位の玉ねぎ生産をはじめ、馬鈴薯・麦などの農作物と酪農が主体となっています。また、漁業はオホーツク海沿岸を漁場とするホタテやカキの養殖やサケ網漁などを中心に行われており資源豊かな地に恵まれている産業も多彩な地域です。
オホーツク地方は自然景観の宝庫である。
簡単には人を寄せつけない厳しさを見せつける 知床連峰。遅い春を取り戻すかのように咲き急ぐ花々。サロマ湖の茫洋たる落日。そしてオホーツク海を埋め尽くす流氷。知床、阿寒の2つの国立公園と網走国定公園、さらに天塩岳・斜里岳の2つの道立自然公園を背にするこの地域は、いかにも北海道らしい景観を随所に見せてくれる。
たとえば知床半島の根元にある斜里から網走にかけて海岸沿いに延びる国道を走ってみよう。右手に広がる紺碧のオホーツク。波が打ち寄せる間際には以久科、斜里、小清水と原生花園が続き、なるほど目にも鮮やかな眺めではある。 しかし、そうした自然景観ばかりに目を奪われていては、残念ながらオホーツク地方の本当の魅力を半分も知ることはできないだろう。というのも、本当の魅力は、左手の内陸側に広がる農業景観にあるといっても過言でないからだ。
国道からどこでもよい。左折したその道をしばらく進んでみよう。土のにおい、緑のにおいが強くなり、やがて澄み切った空のもと、ビート(てん菜)、小麦、ジャガイモの畑が丘陵の沿ってうねり、波うつ雄大な風景が開ける。地平線までまっすぐ延びる舗装道路。その向こうには斜里岳の端正な稜線。碁盤の目のように耕地を区画しているカラマツの防風林や、樹木に囲まれた農家が巨大な箱庭のように並んでいる。
そのあたりには絵ハガキに なるような有名な景勝地などない。しかし、どこを撮っても絵になるのである。景勝地のように傑出し、私たちと対峙するような自然ではなく、見るもの自らそこに溶け込み景観の一部となるような、生活感のある優しい自然。そののびやかな風景には、思わず背伸びして深呼吸したくなるような安らぎが満ちている。
周辺の自然と調和しながら、季節の農作業を通してつくられ、守られてきたに違いないこうした畑作風景は、ここに住む人たちの長年にわたる労働と慈しみの結晶。だからこそ、そこには都市にも自然の只中にもない美しさが生まれるのだろう。
ドイツのフランクフルトからミュンヘン南部にかけての田園地帯を縫うロマンティック街道が、世界的にも注目を集めている。
オホーツク地方の農村景観をめぐる旅もまた、知られざるもうひとつのロマンティック街道の旅となるに違いない。
オホーツクの他地域にはない特色は何かといわれれば、なんといっても流氷の最南限ということだろう。地球規模でも貴重な現象だ。何故流氷が溶けないでオホーツク沿岸に流れ着くのかは、オホーツク海の持つ独特の構造と気候によるものだが、オホーツク特有のこの気候風土は、漁業のみならず農業や森林、動植物に至るまで微妙な影響を与え、オホーツクの個性を創りだしている。
知床が世界自然遺産に登録された理由もこの特有の気候風土や自然サイクルに負うところが大きい。流氷は魚を呼び寄せ、魚はアザラシ、クジラ、オジロワシの餌に、川に上る鮭やマスは森のヒグマやキツネの餌になり、食べ残った残骸が土の養分となり森を育てている。海、川、森林、高山、湿原という様々な自然環境や動植物が、それぞれ密接に影響しあっているのがオホーツクの特色であり魅力でもある。